書き始めたならば、 「了」を打つまで喰らい付け。
自分の作品に責任を持ちなさい、というのも、師匠から教わったことのひとつだ。
しかし、先に進めないときにはどう足掻いても無駄で、
しばらく放置してみる、という技も覚えた。
真面目に書く。誠実さは大事。
でも、睨みあってばかりでは作品そのものが気詰まりになるので、距離を置くことにしている。
エッセイを書いてみたり、だらだらとネットで遊んでみたりする。
それでも公募賞の締め切りには間に合わせたいので、
話もしたくない喧嘩相手の顔を伺いに、ヨッコラショとファイルを開くことになる。
その前に、
好きな映画やドラマ、本の一場面を思い出すことにしている。
もちろん、手がけている作品とは全然違う内容がいい。
主人公はあのとき、どうやって危機を脱出したんだっけ。
カメラワークはどうだった?
端役の処理はどうだった?
あるいは、
どんなトリックがあったっけ?
ラストシーンはどうだった?
あのときあの台詞がでたのは、どういう流れだった?
思い出すにつれて、付け足すべき場面、省くべき箇所が浮かび上がってくる。
そのあとでファイルを開くと、ちゃんと書けるようになっている。
削って足して、また削り。
小さな躓きを繰り返しながら、いつしか物語は「了」の字に向かっている。
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