2011年9月21日水曜日

迂回路


書き始めたならば、 「了」を打つまで喰らい付け。


自分の作品に責任を持ちなさい、というのも、師匠から教わったことのひとつだ。

しかし、先に進めないときにはどう足掻いても無駄で、

しばらく放置してみる、という技も覚えた。

真面目に書く。誠実さは大事。

でも、睨みあってばかりでは作品そのものが気詰まりになるので、距離を置くことにしている。

エッセイを書いてみたり、だらだらとネットで遊んでみたりする。

それでも公募賞の締め切りには間に合わせたいので、

話もしたくない喧嘩相手の顔を伺いに、ヨッコラショとファイルを開くことになる。

その前に、

好きな映画やドラマ、本の一場面を思い出すことにしている。

もちろん、手がけている作品とは全然違う内容がいい。



主人公はあのとき、どうやって危機を脱出したんだっけ。


カメラワークはどうだった?

端役の処理はどうだった?


あるいは、


どんなトリックがあったっけ?


ラストシーンはどうだった?


あのときあの台詞がでたのは、どういう流れだった?


思い出すにつれて、付け足すべき場面、省くべき箇所が浮かび上がってくる。

そのあとでファイルを開くと、ちゃんと書けるようになっている。

削って足して、また削り。

小さな躓きを繰り返しながら、いつしか物語は「了」の字に向かっている。